細菌男
サタンの不定期小説 シリーズ
「細菌男」
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悪。
全ての人は罪深い。
自分の命をつなぐために、他者の命を奪う。
全ての命がそうして生きている。
今生きている者は、命を奪って生きている。
奪わないものは先に滅びる。
呪われし運命。
呪われし生命。
だが、多くの凡人は生涯それに気づきもしない。
だから凡人共は、今まで自分が奪ってきた数々の命には目をつぶり、
無意味な正義を振りかざし
その醜い姿で、声高に悪をののしるのだ。
恥を知るがいい、凡人共。
俺は知っている。
悪こそ、人の本質なのだ。
俺は、自分の罪をぼかさない。
俺は、奪ってきた命をごまかさない。
俺は悪。
俺こそが悪。
純粋な悪。
そう、純粋な悪は美しい。
純粋に奪うから美しい。
一点の曇りもない、漆黒の闇。
俺が目指すのはその姿だ。
だがそんな俺に、どうしてもゆるせない敵がいる。
恥も知らずに、正義の拳を振りかざす敵がいる。
丸く醜い顔で、それは叫ぶ。
「もう許さないぞ！」
もう許せないのはこっちも同じだ。
貴様に何度、沸湯を飲まされてきたことか。
恥も知らずに正義を名乗る、
貴様の無知が、
貴様の存在が、
貴様の全てが許せないのだ。
悪を支えるものは、絶対的な「力」。
だから俺は、ありとあらゆる学問を会得した。
機械工学、生物学、応用化学。
学びは力だ。力そのものだ。
だが、俺の知識を結集した「力」は、理不尽な正義の力にことごとく弾き返された。
物理法則の及ばない、圧倒的な暴力。
理不尽で無慈悲なその拳は、芸術とも言える俺の知の結晶を、ただ力任せに破壊した。
その暴力のエネルギー源は、信じられないことに花だと言う。
花から生まれたエネルギーだと？
聞いたこともない話だ。ふざけるな。
正義を名乗るあいつには、いつも頭脳（ブレイン）が付いている。
そいつは、日々自分を模した英雄を作り続けている。言わば正義の根源だ。
俺も、いつもやられているばかりではない。策略がうまくはまれば、正義の力を封じ込め、追い込むことがある。
だが、俺が正義の拳を封じ込んだ時、頭脳（ブレイン）はどこからともなく現れて、こう言うのだ。
「新しい顔が焼けたよ、アンパンマン」
顔を変えたからどうだと言うのだ。
だが、顔を変えたそいつは
「元気100倍、アンパンマン！」
そう叫んで向かってきた。
100倍だと！？
ありえない数値だ。
物理エネルギーを2倍にするのに、必要な速度は√2倍、つまり約1.41倍だ。
100倍のエネルギーを生むためには、理論上10倍の速度が必要になる。
これは、時速20kmの自転車が時速200kmの新幹線まで加速する速さだ。
それだけの仕組みをどう実現すると言うのか。
それをこの正義の拳は、
理不尽で無意味な顔の交換だけで、
あっさり生み出してくるのだ。
「アーンパーンチ！」
圧倒的な暴力を前に、崩れ去る科学の結晶。
メインシャフト損壊！
制御装置破損率87%！
主モニター消失、
予備モニターへの切り替えにも失敗！
．．．．作戦続行不能。
轟音とともに崩れ去るコックピットの中、
緊急脱出装置を作動させながら、
俺はいつもの呪いの言葉を叫んだ。
「ハ〜ヒフ〜ヘホ〜！！」
終わり。
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どうでしたか？
どこで正体がわかりましたか？
バイキンマンの気持ちでアンパンマンを見たら、どうなるかを考えて書きました。
追記
続編書きました。
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